ケミカルライブラリースクリーニング

老化や疾患による筋萎縮は人々の生活の質を著しく損ないます。筋萎縮へ有効な新薬の開発には、筋形成を検出する強力で定量的なスクリーニング方法が必要になります。筋細胞の融合は、筋形成の重要なステップであるため、筋形成評価の指標になります。

われわれが開発したプロテイントランススプライシングに基づくスプリットルシフェラーゼ再構成法による筋細胞融合評価法は、融合指数や蛍光ベースの方法と比べて、短時間であるとともにライブラリー化合物の蛍光属性に影響を受けないという利点があります。

本方法では、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)と分離インテイン(Ssp DnaE)を用いて、一対の細胞融合標識プローブを設計しました。一対のプローブのうち、一つはFlucのN-末端断片 (FlucN)とSsp DnaEのN-末端断片(SspN)の融合タンパク質(N-Probe)であり、もう一つはSsp DnaE のC-末端断片(SspC)とFlucのC-末端断片(FlucC)の融合タンパク質(C-Probe)です。C2C12筋芽細胞を用いて、N-ProbeとC-Probeを単独に発現する細胞株(N細胞とC細胞)を作成し、N細胞とC細胞を均一に混合して培養することにより、N細胞とC細胞間の融合に伴い二種類のプローブがお互いと接触し、SspN とSspCによる自発的なトランススプライシング反応の結果酵素活性をもつFlucが再構成されます。そのため、再構成Flucより発生する発光シグナルの強度を通じて細胞融合レベルの評価が可能となります。

本方法を用いた96ウェルプレートスケールアッセイにより、ハイスループットに筋形成促進剤を化合物ライブラリーからスクリーニングすることができました。本方法は、基本的な筋原性研究、組織工学、および薬物発見に役立つ可能性があります。また、N-ProbeとC-Probeペアは、さまざまな種類の細胞株やオルガネラの細胞融合イベントを評価するための幅広いアプリケーションの可能性をも秘めています。

  1. A Split-Luciferase-Based Cell Fusion Assay for Evaluating the Myogenesis-Promoting Effects of Bioactive Molecules., Q. Li, H Yoshimura*, T. Ozawa., Methods in Mol. Biol., 2274, 79-87 (2021). DOI: 10.1007/978-1-0716-1258-3_8
  2. A Robust Split-Luciferase-Based Cell Fusion Screening for Discovering Myogenesis-Promoting Molecules., Q. Li, H. Yoshimura, M. Komiya, K. Tajiri, M. Uesugi, Y. Hata, T. Ozawa., Analyst, 143, 3472-3480 (2018). DOI: 10.1039/C8AN00285A