ランダムなアミノ酸配列から機能性ペプチドを探索したり、あるタンパク質にアミノ酸変異をランダムに入れて高次な機能性を獲得する分子進化は、医薬品開発や生理機能解析で欠かせない基盤技術となりました。このようなペプチド骨格のアミノ酸に変異を入れる最も簡単な方法は、遺伝子にランダム変異を導入し、ペプチドあるいはタンパク質を試験管内や細胞内で発現させることです。遺伝子変異導入のテクノロジーは30年以上の長い歴史があり、その中で多くの技術が発展し実用化されています。しかしランダム変異が入ったペプチドやタンパク質から、どのように目的の機能をもったタンパク質をセレクションするか、そのハイスループットスクリーニングは容易ではなく、目的に応じてデザインしなくてはなりません。
我々の研究室では、変異導入遺伝子ライブラリーをレトロウィルスライブラリーに変換して、蛍光プローブのon/offシグナルを指標として目的とするタンパク質をセレクションする独自のスクリーニング技術を確立しました。この技術を用いて、ミトコンドリアタンパク質や細胞内小胞に輸送されるタンパク質の網羅解析、またミトコンドリア膜間腔に局在させるためのターゲットペプチド配列の同定などに実践応用してきました。機能性ペプチドやタンパク質探索のための要素技術として、様々な応用展開が期待できます。
- T. Ozawa, Y. Sako, M. Sato, T. Kitamura, and Y. Umezawa, Nature Biotechnol., 21, 287-293 (2003).
- T. Ozawa, K. Nishitani, Y. Sako, Y. Umezawa, Nucleic. Acids Res., 33, e34 (2005).
- T. Ozawa, Y. Natori, Y. Sako, H. Kuroiwa, T. Kuroiwa and Y. Umezawa, ACS. Chem. Biol., 2, 176-186 (2007).