プロテアーゼ活性解析法

細胞内ではシグナル伝達にペプチド切断酵素−プロテアーゼが利用されています。例えば、細胞死(アポトーシス)におけるシグナル伝達や、癌細胞の浸潤、ヒト免疫不全ウィルスの増殖が代表例です。これらシグナルは細胞機能を調節する上で重要な役割を担っており、現在プロテアーゼを標的とした薬剤開発が進められています。

プロテアーゼ活性を検出する蛍光プローブ開発は国内外で精力的に進められていますが、動物個体深部での観察は容易ではありません。我々はルシフェラーゼを活用することで、生体深部でおこるアポトーシスを検出するプローブを開発しました。

このプローブは、ルシフェラーゼ(Luc)のN末端とC末端をペプチド結合で連結した環状構造を有するLucから構成されています。環状Lucは、立体構造に歪みが生じるためその活性が失われます。この不活性なLucを細胞に発現させ、細胞内に蓄積させておきます。もし細胞内でプロテアーゼが活性化すると、環状Lucが切断され元の立体構造に戻り、発光を検出することができます。動物の肝臓にLucを発現させることで、肝細胞のアポトーシスを非侵襲的に検出できることを実践しました(1-3)。この環状Lucの分子デザインは細胞膜タンパク質CD44の切断活性の検出にも応用展開しており(4)、プロテアーゼ認識配列に変えれば、標的とするプロテアーゼ活性を評価できる一般性を有しています。

  1. Kanno, Y. Yamanaka, H. Hirano, Y. Umezawa and T. Ozawa, Angew. Chem. Int. Ed. 46, 7595-7599 (2007).
  2. M. Ozaki, S. Haga and T. Ozawa, Theranostics, 2, 207-214 (2012).
  3. S. Haga, T. Ozawa, Y. Yamada, N. Morita, I. Nagashima, H. Inoue, Y. Inaba, N. Noda, R. Abe, K. Umezawa, M. Ozaki, Antioxid. Redox Signal., 21, 2515-2530 (2014).
  4. N. Noda and T. Ozawa, J. Cell Sci., 135, jcs259314 (2022).